2020年9月に菅さんが総理に就任してから、政府は、総務省を中心に携帯電話料金の引下げに向けた取り組みを加速しました。
この記事では「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクションプラン」の内容と、そのアクションプランに基づいて、大手キャリア各社が発表する新料金プランをサービス提供開始日までの経緯を時系列的に整理してまとめています。
今後のスマホのキャリア・料金プランの見直しの一助になれば幸いです。
各社の新料金プランの詳細については、当ブログの関連記事を参照してください。
アクションプランの概要
2020年に総務省が実施してきた有識者会議「競争ルールの検証に関するWG」での議論や、2020年10月8日に武田総務大臣が実施した携帯電話利用者との意見交換会などを踏まえて、総務省は、2020年10月27日に、「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン[概要]」をまとめました。
その内容は、複雑でわかりにくい料金体系や乗り換えへのハードルを解消して、健全な競争のもとで各社の携帯料金を抑えていこうという道筋を示すものです。
- 【第1の柱】分かりやすく、納得感のある料金・サービスの実現
・通信料金・端末代金の完全分離
・誤解を与える表記の是正(頭金問題等)
・消費者の一層の理解促進
・中古端末を含めた端末流通市場の活性化 - 【第2の柱】事業者間の公正な競争の促進
MNO-MVNO間
・データ接続料の低廉化(3年間で5割減)
・音声卸料金の低廉化
MNO間
・周波数の有効利用の促進
・インフラシェアリングの促進 - 【第3の柱】事業者間の乗り換えの円滑化
・行き過ぎた囲い込みの是正
・番号持ち運び制度(MNP)の利用環境の整備
・キャリアメールの持ち運びの実現の検討
・SIM ロック解除の推進
・eSIMの促進
・固定と携帯とのセット割引等の検証
今後、総務省は、本プランに基づき、事業者間の競争がしっかりと働くよう、公正な競争環境の整備に取り組んでいくために、公正取引委員会や消費者庁と協力しながら、今後の電波の割当ての際に3つの柱の取組みを審査し、条件の実施状況を着実に検証するとともに、モバイル市場の競争状況は毎年検証し、必要に応じて見直しや追加的な対策を取りまとめていくとしています。
携帯電話事業者においても、本プランを踏まえ、公正な競争環境の下、各自の経営判断に基づき、国際的に見ても遜色がなく、利用者にとって分かりやすく納得感のある料金やサービスの実現に向けて、不断の取組を行うことが期待されるとしています。
引用:「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクションプラン」
各社新料金プラン改定の経緯
大手キャリア各社は、2020年10月27日に、総務省より公表された「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン[概要]」を踏まえて、より分かりやすいシンプルな低価格プランを相次いで打ち出します。
2020年10月28日
ソフトバンクは、2020年12月下旬にワイモバイルから、データ容量20GBと10分以内の国内通話無料をセットにした月額4,480円(税抜)の「シンプル20」をそれぞれ提供すると発表しました。
KDDIは、2021年2月にUQモバイルから、データ容量20GBで月額3,980円(税抜)の「スマホプランV」を提供すると発表しました。
このワイモバイル・UQモバイルの新プランの詳細は、この記事を参考にしてください。
ただし、その後、この新プランは中止となりました。
2020年12月3日
NTTドコモは、ニューノーマル時代を切り開いていくデジタルネイティブ世代にフィットした月間データ容量20GBを月額2,980円(税抜)で利用できる新たな料金プラン「ahamo(アハモ)」を2021年3月に提供開始すると発表しました。
このNTTドコモの新料金プラン「ahamo」の登場により、2020年10月28日にサブブランドで4,000円台の新料金プランを提供すると発表したKDDIとソフトバンクにとっては、圧倒的に不利な状況となり、まさにカウンターパンチを食らった形となりました。
NTTドコモ「ahamo」の詳細(3/1更新)は、この記事を参考にしてください。
2020年12月9日
KDDIは、auの新プランを発表し、ドコモの対抗策が出るのではないかと期待したところでしたが、その内容は、12月11日から、データ使い放題 で「Amazonプライム」と「TELASA」が付いた5G向けの新プラン「データMAX 5G with Amazonプライム」「データMAX 5G with Netflixパック(P)」を追加するだけでした。(2021年2月28日をもって新規受付を終了しました。)
NTTドコモは、既存の段階制プラン「5Gギガライト」「ギガライト」に、データ量の上限をステップ1(1GB)に設定することができる「ギガライト上限設定オプション」を、2021年3月1日に提供開始すると発表しました。既存の段階制プランの値下げはありませんでした。
2020年12月18日
NTTドコモは、料金戦略として、オンライン専用プラン「ahamo」に次いで、docomoの既存プランを値下げするデータ無制限の新料金プラン「5Gギガホ プレミア」「ギガホ プレミア」と3Gから4G・5G契約へ移行するユーザーを対象に月額1,650円で4G・5Gを利用できる新料金プラン「はじめてスマホプラン」を2021年4月1日に提供開始すると発表しました。
2020年12月22日
ソフトバンクは「新しい料金サービスに関する発表会」と題して、新たなオンライン専用ブランド、小中容量ブランドのワイモバイルと大容量のメインブランドの新料金プランを発表しました。
オンライン専用ブランドは「SoftBank on LINE」とし、2021年3月に子会社のLINEモバイル株式会社を吸収合併して、約8,400万のLINEユーザーを取り込む戦略で、その内容は、ahamoと同じデータ容量20GBで月額2,980円(税抜)に、LINE利用時のデータ量をカウントフリー(20GBに含めない)にすることで、ahamoを一歩リードする形となっています。
ワイモバイルは、2020年12月下旬からサービス提供予定の「シンプル20」を改定し、5Gサービスを提供する新料金プラン「シンプルS/M/L」を2021年2月に提供開始するとしています。
メインブランドは、既存料金プラン「メリハリプラン」を1,900円値下げし、4G・5G共通で、データ容量を完全無制限にする新料金プラン「メリハリ無制限」を2021年3月に提供開始すると発表しました。
NTTドコモの新料金プランの詳細(12/22更新)は、この記事を参考にしてください。
ソフトバンクの新料金プランの詳細は、この記事を参考にしてください。
2021年1月13日
KDDIは、「ひとりひとりの毎日に合わせて、やりたいことをトッピングできる新発想のプラン」をコンセプトに、新たに5分無料通話を分離した月額2,480円で20GBのオンライン専用ブランド「povo(ポヴォ)」を立ち上げて、ahamoとSoftBank on LINEとほぼ同等の対抗プランを発表し、さらに、UQモバイルの新料金プラン「くりこしプランS/M/L」とau本体の「使い放題MAX5G/4G」の値下げプランも合わせて発表しました。
KDDIの新料金プランの詳細は、この記事を参考にしてください。
2021年1月29日
楽天モバイルは、各キャリアの新料金プランに対抗する新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT Ⅵ」を2021年4月1日に提供開始すると発表しました。
現在の月額2,980円無制限のプランはそのままに、実際のデータ使用量に応じて、月額料金を値下げする、いわゆる「段階制プラン」となっています。
Rakuten UN-LIMIT Ⅵの新料金プランの詳細は、この記事を参考にしてください。
2021年2月1日
ソフトバンクは、UQモバイルの「くりこしプラン」に対抗するため、ワイモバイルの新料金プランの一部改訂し、4G・5G共通で、月額基本料がずっと変わらない新料金サービス「シンプルS/M/L」について、家族割やおうち割光セットの割引額を500円から1,080円に増額する内容で改定した上で、2021年2月18日に提供を開始すると発表しました。
2021年2月5日
NTTドコモは「ahamo(アハモ)」を3月26日に提供開始すると発表しました。
2021年2月18日
ソフトバンクは、オンライン専用ブランドの名称を「LINEMO(ラインモ)」として、月額料金を、KDDIのpovoと同じ、5分無料通話を分離した月額2,480円で、3月17日に提供開始すると発表しました。
また、LINMOでは、LINEアプリのデータ容量を消費せずに使い放題となる「LINEギガフリー」に加え、LINEトークで使用できる700万種類以上のLINEクリエイターズスタンプが使い放題になる「LINEスタンププレミアム(ベーシックコース)」(月額240円)を今夏に追加料金なしで利用できるとしています。(2021年夏予定)
さらに、ソフトバンクは、SoftBankメインの4G・5G共通の新料金プラン「メリハリ無制限」と「ミニフィットプラン+」を2021年3月17日に提供開始すると発表しました。
「ミニフィットプラン+」は、データ使用量に応じて3段階の基本使用料(1GBまで、2GBまで、3GBまで)が自動的に適用される料金プランとなります。
データ使用量 | ||||
~1GB | ~2GB | ~3GB* | ||
ミニフィット プラン+ | 内訳:基本プラン(音声):980円 データプランミニフィット+ ~1GB:2,000円 ~2GB:3,000円 ~3GB:4,000円 | 2,980円 | 3,980円 | 4,980円 |
おうち割光セット* | -1,000円 | |||
合計 | 1,980円 | 2,980円 | 3,980円 |
*3GBを超過した場合、請求月末まで通信速度を送受信時最大128kbpsに低速化します。
*「新みんな家族割」の割引は適用されませんが、回線数カウントの対象です。
2021年2月25日
KDDIは「使い放題MAX 4G」「使い放題MAX 5G」を3月1日に、「povo(ポヴォ)」を3月23日に提供開始すると発表しました。
3月1日同時に「使い放題MAX 5G Netflixパック (P)」をはじめとした、動画や音楽などのサービスがセットになった料金プランを提供開始します。
2021年3月1日
NTTドコモは「ahamo(アハモ)」の月額料金を2,980円から2,700円に改定すると発表しました。
また、ahamoは、「dカード」もしくは「dカード GOLD」を利用することで毎月のデータ増量等の特典を受けられる「dカード特典」を追加するとしています。
新料金プラン「ahamo(アハモ)」の改定は、この記事を参考にしてください。
ソフトバンクは、ワイモバイルのスマートフォン向け料金サービスに「eSIM」の提供を、2021年3月17日に、開始すると発表しました。
まとめ
NTTドコモのオンライン専用プラン「ahamo」の発表を契機に、大手キャリア各社は、シンプルでリーズナブルな料金プランの改定やWebを利用した手続き簡素化・手数料無料化など、アクションプランに基づいた対応を実施しています。
顧客の獲得競争は、より激しくなり、今後もシンプルでわかりやすいサービスが提供され、プラン変更や乗り換えも、より簡単にスムーズになるでしょう。
大手キャリアのアクションプランへの対応は、始まったばかりです。
各社サービス提供開始日まで、そして、その後も、さらなる大手キャリア間でのサービス向上と値下げ合戦に期待するところです
今まで手続きが面倒だから、大手キャリアの高額プランを継続してきた方々は、ぜひ、これを機に、自身のスマホの料金プランを見直してみてはいかがでしょうか。
キャリア名 | ブランド | 新料金プラン名 | 提供開始日 |
NTTドコモ | ahamo | 2021年3月26日(金) | |
docomo | 5Gギガホ プレミア ギガホ プレミア 5Gギガライト ギガライト はじめてスマホプラン | 2021年4月1日(木) | |
KDDI | povo | 2021年3月23日(火) | |
UQモバイル | くりこしプランS/M/L | 2021年2月1日(月) | |
au | 使い放題MAX 5G 使い放題MAX 4G ピタットプラン 5G ピタットプラン 4G LTE | 2021年3月1日(月) | |
ソフトバンク | LINEMO | 2021年3月17日(水) | |
ワイモバイル | シンプルS/M/L | 2021年2月18日(木) | |
SoftBank | メリハリ無制限 ミニフィットプラン+ スマホデビュープラン | 2021年3月17日(水) | |
楽天モバイル | Rakuten UN-LIMIT Ⅵ | 2021年4月1日(木) |
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